余命46年

30代独男、転落の軌跡

あなたはそれでも宝くじを買いますか?

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 ネット上に、宝くじシュミレーターなんてのがある。
 宝くじの当たる確率を購入枚数に応じて算出してくれるシュミレーターなのだが、やってみると何十枚、何百枚購入しても、枚数と同時に表示される購入金額が高額になっていくだけで、CMでうたわれているような億万長者になれる高額当選に当たる気配はない。

 銀座の当たると評判の宝くじ売り場に列を作る人にその事実を伝えても「でも当たってる人もいる」「買わなければ当たらない」と相手にされないことだろう。でもそもそも億とか千万とか「当たっている人」はいるんだろうか? 「知り合いに百万円当たった人がいる」レベルで聞いたことはあるが、「一億当たった」とかはテレビの中の話でしか聞いたことがない。高額当選を口外しないのは日本の風土とはいうが、そんなツチノコ的な高額当選者に自分がなれる確率を、宝くじ購入者はどう考えているのか?

 なんとなく否定的な流れになってきたのでモンテカルロを破産させた男」の話をしてみる。

 1891年、チャールズ・ウェルズはルーレットで赤と黒の数字に賭け続け、連戦連勝した。彼の儲けが100万フランを超えた時点で、ディーラーは破産を宣言して、ルーレットは「喪中」を意味する黒い布で覆われたが、翌日もウェルズは勝ち続け、3日目になるともっと奇跡的な勝ち方をする。彼は賭金を35倍の「5」に賭けて的中させると、元金と儲けを合わせた金をまたしても「5」に賭けたのだ。そどころか、その後も同じ賭け方をして、5回連続して的中させた。ディーラーは2度目の破産に追い込まれ「モンテカルロを破産させた男」の伝説が生まれた。

 確率的に考えて5回連続5に賭けて当たることなどまさに奇跡としかいいようがない。しかし、現実にはそんなことも起こり得るわけだ。

 もう一つ、興味深い話を。

 今世紀初頭に英国で活躍した賭けの銅元にチャーリー・ディックスという男がいた。彼は確率が正確に50%であるならば、二つの条件をつけて、どんなに金額の大きい賭けでも引き受けたといわれている。彼がつけた二つの条件とは、

(1)賭け金が大きいこと。その金を失うと死ぬほどの打撃をこうむるほどの金額であることが望ましい。

(2)たとえば、コインを投げた場合、表なら表、裏なら裏と賭けを申し出た当人が最初にコールすること。

 それだけだというのである。そこには懼れを持って打つ博奕は勝てない、ギャンブルでは先にコールしたほうが負けという法則があるという。何かを選択するということはそれだけ大きな負荷のかかる行為ということらしい。そして彼はその法則で勝っていたとい。弱者は常に弱者の道を歩むということか。

 ふたつの話は数学的な確率の常識からいえば本来「負け」、もしくは「負けてもおかしくない」話のはずだ。ではそれを踏まえ、次の問題を考えてみてほしい。

 3つドアがあって、1つのドアの後ろには景品の新車が、2つのドアの後ろには、はずれを意味するヤギがいる。あなたは新車のドアを当てると新車がもらえる。あなたが1つのドアを選択した後、残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。ここであなたは、最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更してもよいと言われる。あなたはドアを変更すべきだろうか?

 「初志貫徹」「自分の最初のフィーリングを曲げない」という感覚に頼る人、「三分の一の確率なら、どれを、選んでも同じだから変えない」という人、答えを導く心理は色々あるだろう。

 結論からいうと、ドアを変えたほうが新車を得られる確率は2倍になる。確率で考えていた人で、疑問に思う人もいるのではないだろうか。これは優秀な数学者たちをも混乱させたモンティ・ホール問題という有名な問題で、確率がなぜ2倍になるのかの説明は割愛する。(詳しくはウィキペディアへ→http://ja.m.wikipedia.org/wiki/モンティ・ホール問題

 もしモンティ・ホール問題と同じような確率の場面に遭遇したら、あなたは開けるドアを変えるだろうか? 確率が2倍になると知ったあとでも変えないという人もいるだろう。なぜなら先に話したふたつの奇跡の話があったり、現実には確率だけでは説明のつかない出来事があるからだ。

 しかし冷静にドアを変え、負けても確率のせいにして、感情を合理的に処理する人もいるだろう。もっとも確率でいえば、勝つのはそういう人なのだ。

 さて、この記事のタイトルの「あなたはそれでも宝くじを買いますか?」の問い。たぶんこれすべてを読んだあなたは今後も宝くじを買い続けるだろう。なぜならあなたはチャールズ・ウェルズやチャーリー・ディックスになれる確率を信じているからだ。

 最後にもうひとつ問題を。

 ある日、証券会社の社員を名乗る男から電話がかかってきて「自分は特殊なルートから情報を得ているので株の値動きが確実に分かる。明日のA社の株価を見てください。上がりますから」といわれる。次の日、A社の株価を見ると本当に上がっている。するとまた昨日の男から電話がかかってきて「どうです、上がっていたでしょ。当社に資産運用をお任せいただけませんか?」といわれる。一度当たったぐらいではと半信半疑のあなたに「では明日のB社の株価を見てください。下がりますから」。そして次の日、やはりB社の株価は下がっている。何度繰り返しても、男のいう株価の上がり下がりは的中する。そして男を信じたあなたは男の会社に資産運用を任せ、全額を騙し取られてしまう。

 さて、男はどうやって株価の上下をいい当てたのか?

 少なくともこの問いの答えがわからない人は宝くじを買うのはやめたほうがいいと思う。