カジノ生活25年の常打ち賭人、森巣博は著書『無境界の人』の中でギャンブルにおける三箇条の御誓文としてこう書いている。
①ゲームのルールをよく覚えないさい。
②負けるときは小額の、そして勝つときは多額の賭金(たま)をはりなさい。
③運(ツキ)が去ったと思ったら、すぐに席を立ちなさい。酒でも飲んで寝なさい。
ギャンブルで負ける人は②③ができないから自分は勝てないと思っているかもしれないが、おそらくほとんどの人は①ができていないのではないだろうか。
勝っていると思っている人でも、人生トータルで考えると実際には負けていて、やはり①を完全に理解していない気がする。
それほどルールを理解することは難しい。
そして理解できないから「運」に頼る。
と偉そうに書きながら、今日、競馬新聞もろくに読めないくせに、生まれて初めて馬券を買って惨敗したのはボクだ。
ビギナーズラックなんてものは迷信で、やはりルールを知らない即席賭博師にギャンブルの神様は微笑んでくれなかった。
矢沢永吉ばりに1回目ボコボコにやられる、2回目おとしまえをつける、3回目余裕、と次回のために気合いを入れてルールを覚えたいところだが、これまでの人生経験でわかったことがある。
ボクにギャンブルの才能は一ミリもない。
もし仮に自分が「赤と青、どちらかのコードを切れば止まる」という爆弾の処理を任されたなら、確実にボンだ。
性格的にもボクはギャンブルに全く向いていない。
遊びのつもりで買い、負けも承知のはずだったのに「あの金で旨いを食べれば良かった」とか「映画を見れば良かった」とウダウダ後悔している。
こんな自分は大嫌いだ。
でも何事も経験という言葉で片付ける都合のいい人間にはなりたくないのだからから、始末におえない。
ギャンブルのルールより、自分のルールをよく覚えて、連敗続きの人生で少しは勝ちたい。
ところで帰り道、オレンジ色のスカートの女とすれ違った。
いい女だった。
数歩進んでから後ろ姿を拝もうと振り返ると、女も同じように振り返った。
通りに他に人の姿はなく、女は確実にボクを見ていた。
一瞬の静寂ののち、ボクはまた振り返り、帰り道を進んだ。
ナンパにルールはあるのだろうか?