余命46年

30代独男、転落の軌跡

西へ向かう列車の中、車窓に映る景色を見ながら、やっぱりボクは死んでしまいたかった。

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 何年か前に、ふたりの女子高生が一緒に飛び降り自殺したニュースがあった。

 遺書には「疲れた」とだけ書いてあったらしい。

 コメンテーターは「まだ若くて、この先、生きていれば楽しいこともたくさんあっただろうに」と言っていた。

 ボクは共感する。

 鈍いコメンテーターではなく、敏感なふたりの女子高生に。


 我ながらこの精神状態で良くやっていると思う。

 目覚ましより早く起き、身支度を整え、新幹線の発車時刻の三十分以上前には東京駅に着くという優等生ぶり。きっとこのあと、この男は、一泊二日の出張スケジュールを無難にこなすのだ。

 別に仕事が嫌だからこんな気持ちになっているのではない。

 仕事は仕事と割り切っている。そして労働が嫌なのは当たり前だと思っている。

 でもどうだ。

 この車両に乗っている、スーツ姿の人間の中には「仕事が生きがい」、「仕事が楽しい」などと嘘偽りなく言う奴がいる。きっといる。

 そういう人間と同じ空気を吸っていると死にたくなってしまうのだ。


 小さな石につまずいて、絶望を口にする人に、

「そんなことぐらいで何を言っている。世の中には明日食べるものもない人だっているんだ」

と言う鈍い人間がいる。

 あなたにとっては小石でも、私にとっては大岩なのだ。

 あなたは他人と自分を比べて幸福を計る卑しい人間だが、私は私と向き合い私にとっての幸福を探す人間なのだ。


 昨日は絶望を口にしていたのに、翌日は何事もなかったように過ごす人に、

「そんな絶望は本当の絶望ではない」

と言う鈍い人間がいる。

 そんなあなたの存在が私にとっての本当の絶望なのだ。

 わかって欲しいとは思わない。

 だからせめて偽物の幸福感をひけらかすのはやめてくれ。

 美味しいものが食べたい。いい女とやりたい。

 でもそれと同じにある感情が『死んでしまいたい』なのだ。



 西へ向かう列車は、まだまだ目的地には遠い。

 到着までの間、ボクはあと何度死にたいと思うのだろうか。